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私の取材が知らない朝刊の記事に

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 以前の投稿で紹介しましたが、スポーツの取材にはいろいろな方法があります(もしよろしければ、そちらもぜひ)。極端な話、記事にする選手本人から直接聞かなくても記事を作ることはできます。掲載されたものを読んだだけではどのように取材されたものかはわからないものなのです。
 ある年の国体でのことです。その試合は大記録が達成されて、取材に来ていた記者たちはそれぞれがいろいろな選手を取材していました。私もその中の1人の選手をインタビューしていました。するとふと背後に人の気配を感じます。話の腰を折らない程度に軽く振り向くと若い男の人が立っています。試合後のザワザワとしたグラウンドの片隅ですから誰が立っていても不思議はありません。取材されていることを記念に残しておこうと、チームの関係者から写真を撮られることがよくあります。「撮ってもいいですか?」と丁寧に聞く人もいますし、じゃまをしないようにと気を使ってくれて、静かに撮る人もいます。ですがそんな雰囲気でもないようです。気にはなりましたが、考えても仕方がありません。取材を続けました。
 取材は満足のいくものができました。大記録の裏にあった秘話といった話が聞けて、面白いストーリーができそうでした。
 驚いたのは翌日です。私のインタビューが朝刊の記事になっていたのです。私はまだ原稿を書いてはいませんし、私の記事を載せる場所でもありません。でも私が書いたとしたら間違いなくそういう流れの記事になるだろうといった文章がそのまま新聞の地方版に乗っていたのです。
 私の頭に浮かんだのはもちろん取材中に背後に立っていた人物でした。レコーダーの性能は上がっているので、少しくらい離れていても声を拾ってくれます。しかし冷静に考えれば、私の後でその選手に聞いたことも考えられます。おそらくその選手は同じ話をするはずです。それなら同じような記事になるでしょう。
 どちらにしても腹を立てても仕方のないことです。もし立ち聞きをしていたとしても、罪はありません。試合後のグラウンドでの立取材、どこでどのように話を聞こうと、それがその記者の取材方法なのですから。
 ここからはもし立ち聞きだったらという前提の話です。途中で話に割って入ってもいいから、せめて「○○新聞の○○です。一緒にいいですか?」くらいは言って欲しかったというのが本音なのです。どんなに不慣れな競技の取材でも、私は絶対にこういうことはしない、と誓ったのです。少し大げさで、レベルの低い話ですが。