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ひっそりと辞めていく選手

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 大々的な引退セレモニーなどが行われ、惜しまれながら引退するスポーツ選手というのは圧倒的に少数です。「一握り」という慣用句が使われますが、プロ、アマ含めたスポーツ界全体を見渡せば、「砂丘の砂」といった表現の方がしっくりくるのではないでしょうか。でも、セレモニーとなった引退は予定調和な気がして、どうしても違和感を伴ってしまうのです。
 大々的な引退式とは正反対なのがマイナースポーツ選手の引退です。ほとんど注目されず、ひっそりと引退するマイナースポーツ選手たちですが、取材をしていると以前から交流のあった選手から直接「今年であがります」といった報告を受けることがあります。おそらくその先、取材をしても誌面に載ることはないでしょう。それよりも先に今回の記事の材料を集めたい、という意識が働きます。それならば「そうですか。お疲れ様です。これからもがんばってください」とお茶を濁して、立ち去るというのも選択肢です。
 ですがそんなとき単純な取材者の興味として、引退の言葉を聞きたいと思うのです。その選手が子どもの頃から続けてきた競技生活がそこで終わる。しかもほとんど注目されずにひっそりと。だからこそ、その選手なりの心からのセリフが聞けるかもしれない。もしかしたら一遍の小説を読んだような満足感が得られ、それは心にしまっておける言葉となるかもしれません。
 ところが、実は残念ながらまだそういうセリフが聞けたことはありません。ある男性選手はじっくりと話を聞こうと、こちらが「15年間ですね。振り返ると…」と話の糸口を探し始めたとたん両目に涙を浮かべて「ちょっと、ごめん…」と控室に隠れてしまいました。私のテクニックがなかったのかもしれません。テレビ取材など逃げられない環境であったなら引き出せたかもしれません。込み上げてくるものがあったということは、そこに何かしらの言葉もあったはず。ですが結局それは聞けずじまいとなりました。
 そうなるとやはりある程度の舞台セッティングが必要ということになります。それでもやはりセレモニーから生まれるセリフにはどこか醒めてしまう。そこへきて堂々巡りをしてしまうのです。