athlete knowledge

アスリートとアスリートを応援する人のための知識データベース

2013年に実施されたOECD(経済協力開発機構)による国際調査によると、加盟国平均における一週間の勤務期間は38.3時間に対し、日本はなんと53.9時間と加盟国最長。週平均15時間以上多く学校に滞在するわけです。実際、2011年に部活動を兼務したことも要因となって過労死した堺市の教諭について、労災認定が降りています(※1)。大げさでなく、部活動顧問を兼ねながら教職を務めることは、教師を過労死に追い込む一因になっていると認定されたわけです。こうした状況を、座して見守っていても良いものでしょうか? つい3月まで高校生だった冨澤拓海選手に、高校における指導者が置かれている現状について語っていただきました。

■ ■ ■
アスリートナレッジをご覧の皆さまこんにちは、冨澤拓海です。前回の記事をお読みいただいた皆さま、ありがとうございました。自分の夢を目指しながら、広い視野でやっていけたらと思っております。

今回は、サッカーの指導についてお話しさせていただきます。私自身も短期間ではありましたがコーチをやっており、指導についても少しだけですがお話を聞く機会がありました。今後も、GKの指導などでサッカーに恩を返そうと思っております。
 
やってみてさらに感じましたが、サッカーを指導するのはすごく難しいです。選手を全員見ながら、相手が子どもたちなら安全性にも配慮し、かつ選手の能力を上げ、試合に勝たせる。まぁ、難しい! 今の私には、少人数のGKの選手を観るので限界かもしれません。
 
部活動の指導者は授業や、事務作業をしながらを選手、チームを育てます。選手より辛いじゃん! ということで今回は教員が指導者をやることへの負担について考えます。
 
先にこれだけは主張したいのですが、今日まで私に関わっていただいたコーチの方はみな熱意、パッションにあふれておりました。素晴らしい方々ばかりです。ここは、声を大にして言わせてください。感謝しております。私が今このようにサッカーに接しているのは、その方々のおかげです。
 
話を戻すと、まず日本のサッカー環境として「指導者になるためには、先生になるべきだ」という意見が多数を占めています。今日徐々に改善されつつありますが、サッカーコーチはとても厳しい職業と聞きます。他にアルバイトなどで生活を補う指導者の方々を、私自身も見てきました。だから生活を保障するために教員になり、部活動を指導するという選択をする人がたくさんおり、その選択を勧める保護者の方々も多いのです。私の友人も、大学で部活の顧問をするために教員を目指す者もたくさんいます。
 
しかしながら学校で教員をして、かつチームを指揮する、指導することはあまりにも指導者にとって負担になりすぎると思うのです。職業の形としては教員ですがサッカーコーチと先生の兼業、二つ仕事をしているようなもの。しかも部活動の顧問をしても給与はほとんど変わらないという話も聞きました。また、指導者、教員にもフリーな時間があるべきだと思います。教員、指導者が休みを家族、恋人のためにあまり使えないのは日本独特であり、改善すべき点の一つだと言えます。
 
私自身も高校はサッカー部でしたが、監督、コーチは熱意が凄まじかったので影響はほとんどありませんでした。しかしながら、平日の練習をギリギリまで見てその後すぐ会議に向かうことは多々ありました。また土日は他校とのTMや公式戦、トレーニングがあり多忙を極め、私の高校では安全性が求められ、教員がいる時のみしか選手は自主練習を行なえないシステムだったためコーチが選手を思い最後の選手が終わるまで帰らずともにトレーニング、または事務作業をしておりました。
 
私の知らないところでも多くのルールや境遇があり、指導者に負荷をかけていると思います。ともに100%でやることには負担がかかりすぎますし、どちらかが疎かになるということも私が経験してないだけで実際に起こっていると思うのです。
 
解決策としては、部活動というシステムではなく、海外のように地域のスポーツクラブにスポーツ環境を設置するという考えです。指導者の負担を減らす分、指導者が競技の指導力にさらに時間を費やすことができるため、日本サッカーのレベルの底上げにつながる考えでもあると思います。
 
また選手もその仕組みだと若い頃から移籍が可能なため、部活動のように3年間ずっとベンチ外になるなどの境遇も減ります。また前回の投稿のように高校の部活動は引退するとほぼ関わりは終わりますが、生涯にわたってそのクラブでサッカーができるということもあります。指導も専門家、スペシャリストが取り組む方が良いと思うのです。徐々に増えてきている地域総合型スポーツクラブにも注目です。
 
しかし、それは今日の日本すべてで改善できることではありません。海外の良いところを真似しよう、と思ってもそれが全て良いとは思いません。郷に入れば郷に従え、ではありませんが、日本の部活動のシステムでありながら指導者の質を上げ負担を減らす取り組みを行なうべきであります。
 
例えば、カテゴリーの違う外部コーチに指導を委託するという方法です。一週間の内の1~2回をお願いしたり、部員数の多いチームではチーム分けをした場合の数チーム、さらに中学校などの顧問に選手歴、指導歴が無い場合に完全に委託することも有効です。行なっているクラブも割とありますが、さらに増やすべきだと思います。外部の指導者にとっては普段教えるカテゴリーと違うための指導力向上にもなり、選手にはサッカーの理論、技術に幅を持たすことができます。

また、外部に委託という意味では、フィジカルはフィジカルコーチに委託することもひとつです。私のチームの場合、月曜日のTRをフィジカルに当てていたため、月曜日のその時間は教員として自由に時間を使うことができ、負担を減らしておりました。

このように外部に委託したりすることで教員の負担を減らしつつ、指導者という職業の価値を上げることが可能になります。さらに専門分野のスペシャリストが教えるわけですから理論的、効率的にトレーニングに結果が出る可能性も高いです。

今日、学校の教員と指導者を共にすることで、負担はかなりのものになると思います。また、サッカーコーチという職業も価値が低く地位的にも収入的にも向上すべきだと私は思うのです。この問題を解決していくことで選手レベルの底上げにもつながると思います。
 
選手の皆さん、自分の時間、家族の時間まで使っていただいている指導者の方々に常に感謝の気持ちを持ちましょう。あなたの当たり前は、当たり前ではないかもしれません。

<了>

※1:http://www.asahi.com/articles/ASH324T4JH32PTIL01H.html