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実は、海外でプレーするので最も重要と言えるのは、プレーの内容でも言葉の壁でもなく、このビザの問題。いくら実力があろうが、経歴が高かろうが、ビザ問題をクリアにしなければその国でプレーすることはできません。そのぐらい大切なものであるのにも関わらず、海外挑戦する多くの選手が無知のまま渡航しているのが現状です。
  
ビザはサッカーや日本人に限らず、自国外に訪れる人は世界中誰しもに関わる重要なもの。ビザとは簡単に言ってしまえば、発行されればその国にいてもいいという許可が降りるもので、逆にビザがなければ国外への退去や、母国の強制送還が命じられる非常にシビアなものです。
 
日本人は簡単に世界中へ旅行することが可能ですが、それは日本のパスポートが世界最強との呼び声が高く、非常に国家として信頼されているからです。本来は自国以外へ入国するためには、ビザや入国許可の申請を出し、お金や時間など多くの手間をかけてようやくその地を踏むことが出来ます。
サッカー留学やトライアウト先としてはブラジルやオーストラリアなどの国も人気ですが、実はこれらの国もパスポートだけでは入国することが出来ず、必ず事前にビザを申請し取得しておく必要があります。

■ビザの問題で契約できなかった……はプロとして評価されていない。
昨今は海外のクラブへトライアルする日本人が非常に増えましたが、現地でプロとなりサッカーだけで生活することを夢見て渡航するも、結局契約できずに帰国する選手も後を絶ちません。
 
その帰国した多くの選手が、一様に口を揃えて言うセリフが
「チームからは評価されたけど、ビザの問題があって契約できなかった」
「給料は出してくれるという話になったが、ビザを取ってくれないから帰国してきた」
などという言葉です。国によって違いますが、通常はビザがないと数週間から3カ月ほどの滞在しか認められませんから、ビザが取得できないでいる間に帰国日が来てしまい、諦めて帰ってきた……というわけです。
 
「実力は評価されたけどもビザのせいで話がおじゃんになった」というのが彼らの言い分なのですが、実はここの認識には大きな間違いがあります。日本人が海外でプレーするということはすなわち「外国人助っ人」としてプレーするということで、現地選手よりも高い能力や貢献が求められています。
 
言葉の問題や文化の違い、外国人と契約することに関しての様々な問題を差し引いてもチームに迎え入れたい!と思われた時、はじめてプレーすることが可能になるわけでして、「ビザの問題で契約できなかった」というのは実は大層な物言い。クラブ側からの視点に言い換えると「ビザを取る手続きや費用を支払ってまで獲得する価値のない選手」ということ以外の何物でもないわけです。
 
「実力は評価されてたけどトラブルがあった」のではなく、そもそも「実力が足りなかった」ということ。その辺りを理解した上で、海外のプロクラブにチャレンジして行く必要があるでしょう。
 
■自分でビザが用意できれば契約しやすくなるという逆転の発想
ただ、ビザは簡単に取れるものではありません。今まで税金だって納めていない外国人がその国に長期滞在するわけですし、言葉や文化の違う彼らがどんなトラブルや争いを起こすかもわからず、その国の外務省や入国管理局が簡単に許可を降ろしたくないという気持ちは、逆の立場を考えれば容易に想像できます。
 
選手登録の際にも、ビザがなければ選手証が発行されないサッカー協会は多く、「下部リーグではノービザや観光ビザでプレーする」という作戦を練る選手も多いのですが、その計画はなかなか成功しないのが実情でしょう。
 
ですが、逆転の発想もあります。自分でビザを用意すればプレーしやすくなるという考え方です。
 
例えば、近年ドイツやオーストラリアの下部リーグでプレーする日本人選手が非常に増えていますが、これは「ワーキングホリデー」という制度を利用してビザを取得している選手が多いからというのが理由に挙げられます。
 
ワーキングホリデーとは、簡単にいえば1年ほどは働きながらその国にいてもいいですよというもので、両国間での交流を活発にし文化交流を促進するためのもの。通常ビザといえば労働ビザや居住ビザで、現地で受け取る給料のハードルや審査が非常に厳しく、そのため多くの選手が取得を断念しているのですが、このワーホリのビザは比較的簡単に1年間の滞在許可が取得できる傾向があります。
 
あとは学生ビザという方法もあります。現地の学校に通う選択をすれば、国からビザの許可が簡単に降りるため、その国に長期滞在することが可能です。サッカー留学先として人気なのはブラジルやスペインですが、そこでトライする選手には、学校に通いながらプロクラブでトレーニングし、ステップアップを狙うというスタイルをとっている選手が多く存在します。
 
ブラジルやスペインなどの超強豪国で、サッカー選手として労働ビザを取ることはあまりにも狭き門。ただでさえ実力者ひしめく世界の中、彼らよりも数段実力が上でないとクラブはビザを用意してくれませんし、ビザ習得に必要な給料の額を提示されることすら難しいでしょう。ですが、学生ビザがあればとりあえずは数年滞在することが可能なので、長期的な視点で継続してチャレンジすることが出来ます。
 
その国の人と結婚するという方法もあります(笑)。僕はヨーロッパでプレーしていますが、やはり欧州となるとビザのハードルはいろいろな意味でさらに高まります。ですので、ビザの問題にぶつかった時には「はあ、日本とハーフなイタリア人の綺麗な女性と運命的な出会いをして“結婚ビザ”を手に入れたいなあ」というくだらない妄想に耽ることもあります(笑)。ただ、アフリカや南米出身の選手は本当にこういうやり方で、その国のビザを手に入れているたくましい人も存在するので、一概に一笑に付すことも出来ません。

このようにビザを自分で用意できれば、クラブがその選手と契約するハードルがひとつ下がりますから、選手としてはプレーできる可能性がグッと上がるわけです。そういう意味ではワーホリでのプレーが容易なドイツやオーストラリアは、最初のトライ先としてはオススメ国のひとつといえるでしょう。
 
■ビザが“ゆるい”国へチャレンジする。
また、そもそもビザの制度がイージーな国でプレーするという選択肢もあります。例えば、タイでは多くの日本人選手がプレーしてきましたが、このビザへの裏技が数多く存在した国のひとつです。
 
例えば、タイではビザ無しでも30日間の滞在許可がありますが、一度国外へ出てから再入国すればカウントがゼロになりました。なので、期限が近づくと陸路でミャンマーやカンボジアに行き、出国したらすぐ入国して戻ってくる「ビザラン」という方法を繰り返せば、いくらでもタイに滞在することが可能でした。
 
また、もし不法滞在をすると1日辺り500バーツ(約1500円)の罰金が課せられていましたが、その罰金の上限は2万バーツ(約6万円)。しかもそれを支払いさえ出来れば簡単に出国や再入国が可能でした。つまりいくら滞在しても罰金を払えれば良いので、1年プレーしたあとに6万円を支払って日本へ帰国し、また次のシーズンの頃にタイへ戻ってくる……という選手も存在しました。
 
その他にもタイでは色々な抜け道が存在し、このビザのゆるさと高まるサッカー熱もあってプレーする日本人選手が急増していたのですが、その制度の殆どが昨年2014年に改められ現在では使えなくなっています。そのためタイでプレーする日本人選手は減少傾向にあり、変わって近隣の東南アジアに流れる選手が増えています。
 
ヨーロッパでもシェンゲン協定というものを結んでいる西側諸国は、ビザの制度がかなり厳しくプレーするのは一筋縄ではいきませんが、一方で東側の国は西に比べると比較的ルールがゆるく、近年プレーする日本人選手がじわじわと増えています。このようにビザ取得のハードルが低い国を選んでチャレンジするというのもひとつでしょう。
 
■ビザについて調べることはプレーする第一歩
僕は現在リトアニアでプレーしていますが、実は直前までラトビアという国にいました。しかし自分の実力不足で、クラブ側は「契約してもいいがビザは取らない」というスタンスだったため、ビザが降りやすいとうわさのリトアニアに流れてきたという理由があります。
 
そのリトアニアでは、トラブルにトラブルを重ねましたが、結局最後はクラブがビザを取得してくれ、今日までプレーすることができています。
 
日本代表選手ですら、ビザが獲得できずに移籍を諦めたケースは多々あります。なので、実力に関わらず海外でプレーするにはビザの問題をクリアするは絶対条件。とは言えなかなか自分ではどうしようも出来ない部分も多いのですが、なるべく必要なことは調べ、少しずつ備えていく必要があります。それが海外組になる第一歩ではないでしょうか。