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前回の林卓人(サンフレッチェ広島)選手の分析シリーズが大変な好評をいただいた山野さんのGK分析シリーズ、第二弾はJ2・ジュビロ磐田で目覚ましい活躍を見せるGKクシシュトフ・カミンスキー選手の分析です。

カミンスキー選手は今季ルフ・ホジューフ(ポーランド)から加入し、初年度から大活躍。29節終了時点で2位につけるジュビロ磐田の守備を牽引し、記録だけでなく記憶に残る数多くのスーパーセーブを披露しています。1990年11月26日生まれの24歳、GKとしてはまだまだ若い選手だけに今後のステップアップも期待されるカミンスキー選手を山野さんはどう分析したのでしょうか?
 
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――今回は、山野さんのブログでも登場したカミンスキー選手の分析をお願いいたします。彼については、どのような点が優れているのでしょうか?
 
山野陽嗣(以下、山野) 前回の林選手に関する分析では、5つのポイントを挙げて述べましたが、カミンスキー選手については計11個あります(笑)。それだけ、優れたポイントが多い選手だということです。特に、冒頭に挙げる部分については非常に重要なので早速参りましょう。まず、1つ目が「あのサイズで俊敏かつ遠くへ動ける」ということです。
 
カミンスキー選手は191センチ81キロと、日本でプレーする選手の中では非常に大柄な部類に入る選手です。あれだけ身体が大きいにも関わらず、速く遠くに動ける。これが、カミンスキー選手の最も優れた部分だと思います。というのは、191センチ81キロというサイズ自体を持つGKは日本にもいます。しかしながら、彼と同じサイズの日本人GKになると、どうしても重くて遅い動きになってしまいますし、遠くに飛べないんですよ。
 
――確かに、同じぐらいのサイズの選手を思い浮かべた時、カミンスキー選手ほどの俊敏性がある選手は少ないかもしれません。
 
山野 そうなんです。同じようなサイズの身体を持っていても、ハイボールぐらいでしかメリットが生かせていない。カミンスキー選手はその大きさ、ジャンプ力もあるのでハイボールばかり注目されますが、より重要なのはリーチがあることでセービングの守備範囲が非常に広いということですね。このリーチがあって、さらに俊敏かつ遠くに飛べるので、守備範囲が非常に広くなるわけです。
 
――大きな選手ですが、1対1でも恐ろしく速く動いてあっという間にコースを消してしまうシーンが目立ちます。
 
山野 速く遠くに動ける、ハイボールに強いだけでなくセービングの守備範囲自体が広い……これらの特長は、すべて日本人GKに足りない部分だと思います。カミンスキー選手の動きは、日本人選手の同じサイズではほとんど出せないようなものなんですよね。彼のプレーから、これからの日本が必要とするGK像を見出してほしいと思います。
 
――どういうことでしょうか?
 
山野
正直、Jリーグでプレーしている選手を見ていると、恐らくなのですが「Jリーグで活躍できるか、通用するか」という観点でスカウトされているのだと思います。それ自体が間違いというわけではありませんが、恐らくですが「世界で通用するかどうか」という観点ではあまり獲得されていないように思うのです。つまり、そこそこ身長があって、足元の技術が高い、センスがある。確かに、そういう選手はJリーグでは通用するかも知れません。しかし、林卓人選手の分析でも触れましたが、世界で活躍するには“最低でも”185センチないと厳しい面が出てくるのです。
 
――昨年にポーランドに取材に行きましたが、GKの選手はみな非常に身長が高かったですね。僕の身長(184センチ)でも見上げてしまう選手ばかりです。
 
山野
もちろん日本の中にも、190センチ以上あるGKがいないことはないんです。しかし、そういう大きなサイズの選手に対する育成ノウハウはまだないように思います。中学生・高校生の頃から長身選手を、カミンスキー選手のように俊敏かつ遠くに動けるように目的を持って育成する必要があります。Jリーグという枠組みだけでなく、世界に通用するという枠組みが必要です。しかし現状では、あまり身長という部分が重視されていない気がします。
  
それは、やはり上記したように190センチ以上のGKはやや動きが重かったりするからでしょう。鹿島アントラーズにも190センチのGKが居たと思うんですが(編集部註:小泉勇人選手)、現時点でまだ若いということもありますがトップで出場はできていません。
 
やはり、プロに入ってからでは俊敏性や遠くへ飛ぶ能力を伸ばすのは難しいのです。もっともっと、若い頃から素材を大事にし、速く遠くに動けるGKを育成すべきでしょう。先ごろ広島であった大学選抜の大会では、私が視察に行った初日と最終日には1分も出場しなかったサンフレッチェ広島の前川和也選手の息子・前川黛也(だいや)選手を注目していました。
 
――出ていた選手ではなく。どういう部分が優れていたのでしょうか?
 
山野
試合には出ていなかったですが、ウォームアップでの動きをじっくり見ていました。まだ俊敏性には課題がありましたが、190センチ以上あるということが非常に大事です。今後、「速く遠くに動く」という部分を強化してさらに成長できれば、スケールの大きな良いGKになれるのではないかという可能性を感じました。こういう人材を、日本はもっと大事にすべきだなと思います。
 
実はバルセロナのGKコーチでも、最も大事にすべき点は「身長」だと明言しています。最低でも185センチないとGKでは通用しない、とハッキリ言っているのです。
 
――実は、私もFCバルセロナ関連の書籍で何度もそういった記述を読みました。ビクトール・バルデス(183センチ)の印象が強いかもしれませんが、今のバルセロナのGKテア・シュテーゲン、GKクラウディオ・ブラボともに187センチであり、足元の技術よりもまずセービングの能力が優れているように思います。
 
山野
そうなんです。バルセロナのイメージだと「足元の技術が重要」と思われがちですが、実は身長なんです。よく選手を身長で判断してはいけないといわれますが、あくまでそれはフィールドプレイヤーの話。GKに関しては、FCバルセロナでさえ身長をまず重視しています。そのために中学生年代からレントゲンを撮ったり、親御さんの身長も調べたりするなど、いろいろなことをやっているわけですね。日本よりも進んでいるバルサがここまでやっているわけですから、日本もこういうことを積極的にやるべきだと思います。