athlete knowledge

アスリートとアスリートを応援する人のための知識データベース

――いま、電車の中ではみんなスマホを開いていますよね。かつて雑誌や新聞だったものがそこにすべて置き換わっていて、相対的に紙の雑誌や新聞は厳しくなってきています。

小谷野 とは言え、広島の地元メディアではカープの比重が本当に大きいでしょう。私は広島中心から東京や大阪中心の生活になりましたが、そうすると、オリンピック代表やフル代表に選ばれているサンフレッチェの浅野選手の情報とか、エディオン女子陸上競技部の木村文子選手の話がTVなどのメディアでどんどん出てくる。広島では、ほとんど露出がないような感じなので、この現状は何とかしないといけません。

――私も同感です。広島県にお住まいでない方には信じられないことでしょうが、場合によっては関東圏よりも広島県内のほうがサンフレッチェや広島の他スポーツの情報は少ない、と感じます。

小谷野 なので、私が今もサンフレッチェの経営をしているとすれば、自分でサンフレッチェに特化したコミュニティラジオ局やがんがん映像発信するネットメディアを作るとかを目指すでしょうね。そういう発想の転換が要ると思います。
 
――ニコ生で毎日選手を出演させて何かコメントしてもらい、それ自体がニュースになって一般メディアに広がっていくとか。

小谷野 実は昨年からそうした構想は私なりにありまして、映像配信の部門もしくは子会社のあり方を考えていました。「黒田ブーム」や「カープ女子ブーム」を単に傍観していると、広島の街中でサンフレッチェの姿はどんどん埋没してしまいます。なので、コアでもライトでもいいから、情報をどんどん発し続けることです。メディアが取り上げてくれないのであれば、自分でそういう仕掛けを作っていくとかね。サンフレッチェに限らず、Jクラブができることは、たくさんあると思います。
 
私とfacebookで繋がっているサンフレッチェのサポーターが「カープばかり取り上げられておかしい」と投稿しているのを目にします。私はカープ好きでもあるので複雑な心境ですが(笑)、クラブとしてもそういうことをサポーターに言わせたままにしていては絶対にいけないなと思います。メディアにもメディアでスポンサーとの関係もあって、なかなかカープ情報以外に尺を割けない事情もあるとは思います。なので、クラブ自身で映像配信やラジオをやればいいじゃないかと思います。
 
多額のお金をかけなくてもできるわけですから。ラジオ局を作ってくれたら、サポーターの方々と交代で、私もDJをやっても良いですよ(笑)。それは冗談としても、いろいろ、クラブの情報発信の裾野を広げることはできると思います。また、こういう試みが仮にすぐにできなくても、クラブの意欲や取組み状況をサポーターや市民に知らせていくことはとても大事だと思います。特にサポーターに対しては、期待感の醸成と言うか、「クラブが今していること」と同じく「クラブが目指していること」を示すことは、いろいろな局面で大事ですね。

――聞けば聞くほど、もうちょっと小谷野さん社長でどこまでやれるかを見たかったなと思います(編集部注:もちろん、織田秀和現社長を否定する意味は一切ございません。念のため)。

小谷野
いろいろなスタイルの社長がいるわけですから、そこで結果が出ればいいわけで。クラブライセンス制度というのはファイナンシャル・フェアプレーを促すものであって、クラブの経営を縮小させるものではないわけです。ただ「クラブライセンス制度がいけない」という論調も一部にありますが、そこは単純に経営者の資質の問題が大きいと思います。

――2ステージ制に関しては、いかがでしょうか?

小谷野
これは、予想外にファーストステージで浦和が独走しすぎたので評価はまだ難しいと思います。

――確かに。J1で観客が増えているのは浦和、FC東京、G大阪、あと神戸でしたね。
 
小谷野
三木谷オーナー自らがホームスタジアムの芝生の状態に苦言を呈したりと、神戸は集客努力など様々なところで本気を出していますね。現場に目を転じても、神戸のネルシーニョさんは本当に素晴らしい監督ですよね。サンフレッチェとミシャさんは切っても切れない関係にありますが、現場レベルでJリーグの監督で勝つことに特化して誰が凄いかという話になると、ネルシーニョさんの名前が常に挙がりますからね。
 
一方で、僕もサンフレッチェを一生懸命フォローしていますけど、金沢も岐阜も我々がスポンサーになっていますし、クラブを離れたので僕の好きなアーセナルとかユベントスやバイエルンを見る時間もできました。サンフレッチェにいた時は、ある意味入れ込み過ぎてサッカーから離れたい日もありましたが、今は気軽にサッカーを見られるのは良いですね(笑)。仕事がないときは、これまで以上にサッカーを観ていますね。改めて、「サッカーって本当はこんなに楽しいんだな」というのをかみ締めています(笑)。

――ぜひまた何らかの、表に現れる形でサンフレッチェやJリーグの改革に関わってほしいです。

小谷野
表でですか(笑)。私も証券会社やコンサルタントとしていろいろな上場企業にアドバイスをしてきましたけど、自身が上場企業の役員になるのは初めてです。サンフレッチェの社長の時は「1日25時間働く」と言って、市長選の時は「1日30時間働く」と言いましたけど、本当に30時間・35時間はたらくという気合でやらないと会社役員はだめかなと。まずは今のポジションで歯を食いしばって頑張っていきたいですね。
 
話がそれてしまいましたが、Jリーグの改革に関しては、やはりJリーグのシステムをどう考えるかが重要だと思います。今年から始まった2ステージ制の採用にはシーズンで2つの山を作れたら良いという発想がありますが、今年のファーストステージは浦和の独走で目論見が外れたように、それってどうなるかわからないでしょう。また、今のプレーオフの制度だと勝点が上位3つだけのポストシーズンになってしまって、想定しているよりも盛り上がらない可能性もある。
 
私はポストシーズンがリーグの収益構造上、そうしても必要だというのであれば、1ステージ制で上位4チームがグループリーグをやって、上3つがACLに行って、一番勝点上のところがリーグチャンピオンがいいのではないかと。1ステージ制で上位4チームのリーグ戦。そうすると3マッチデイが必ずとれて、放映権料も出ますよね。私は一貫してポストシーズンの方式としてこのやり方を推しています。
 
ただ、Jリーグが18チームでやると日程上はポストシーズンを組むのが本当に難しいですよね。そもそもこれがかつてのチャンピオンシップをやめた理由なんだから。いろいろな立場の方々がいますので、あまり言うべきではないかとも思いますが、ゲームの質を維持し、無理のない日程のもとでポストシーズンをやるのであれば、J1を14チームから16チームぐらいにしていいとも思うんですよね。

――その分試合数が減った収益は、ポストシーズンでまかなえるということで。

小谷野
現状は水曜日開催が増えるだけですからね。また、Jリーグの価値を高めるためという意味では、ナビスコ杯はJ1とJ2のホームアンドアウェーで戦うトーナメント制にしたほうが良いと思います。もちろん、「今そこにあるサッカーを愛せ」というのが基本だとは思いますが、いまJ2の中位以下のクラブのサポーターにとっては、上を見る機会が少ないかなと思うんですよ。それがナビスコ杯でJ1のチームとホームで戦う公式戦があるとなれば、水曜日など平日開催でも意義が大きいと思います。

――確かに、一昨年はJ2に落ちたG大阪の試合に多くの動員がありましたしね。

小谷野
ナビスコの一回戦とか二回戦とかで、J1のチームがホームに必ず来るとなると、平日開催対策としては意味があると思います。J1のクラブ数を18チームに保って3クラブを自動昇降格させるのと同じくらい、J2にいる意味も増えるのではないでしょうか。
 
でも一方で、J1とJ2の間の3クラブの自動昇降格はどうかなあとも個人的には思います。J2からJ1に上がってすぐに落ちると、経営上かなりダメージが大きい。昇格チームは強化費を増やしたところで、現実問題としては半分くらいの可能性で再降格する可能性があります。そうなると、経営がガタガタになる危険性もあります。ある程度、J1に上がる力があるチームが昇格するくらいにしたほうが良いと思います。
 
――3回のプレーオフのうち2回、J2で6位だったチームが昇格しました。

小谷野
あれも6位に入れるかどうかで終盤を盛り上げられるという手法はいいか悪いかというと、本当に判断が難しいところですね。それももう何年かやってデータが集まれば、プレーオフをやったときとやらなかったときでJ2終盤の観客動員の差がもう少し検証できるかなと思います。
 
ただJ2の優勝クラブよりも昇格プレーオフを勝ち上がったクラブの露出の方が大きいという不思議な現象がありますよね。2ステージ制と並んで、昇格プレーオフの是非という部分ももう少し検証が要るかなとも思います。あと、J3創設に関しても一言。J3に関しては「三部にJの名前を冠していいのか」という議論はありました。私も最初は反対でした。でもいろいろ考えて、サッカービジネスのパイを縮小するのは嫌だなと思い始めました。
 
また、Jリーガーになった人の将来の雇用の受け口、セカンドキャリアは大切ですから。できるだけサッカーに近いところでメシを食べられるようにしたいということで、最終的に私はJ3創設に賛成しました。J3ができると現場のスタッフやスクールのスタッフなどで、引退後の元Jリーガーの働き口が増えますよね。Jリーグの裾野を広げるには賛成なんです。ただ、トップリーグはACLとか代表との兼ね合いで、どうやって試合のクオリティを向上させていくのか、そこは本気で考えなければと思います。
 
――プレミアリーグ構想についてはどうでしょう。堀江貴文さんもちらっとそういうことをおっしゃっていましたが

小谷野
僕は、仮にプレミア化を断行するのであれば、中途半端な14とかよりは10~12クラブくらいが良いと思います。そこで、ダブルチームが作れるくらいの陣容をそろえる訳です。

――リーグとACLなどを並行して戦えるということですね

小谷野
その10~12チームに関しては普通に選手をターンオーバーして、週2試合が常態化しても普通に回せるくらいの選手層にするのでしょうね。そうなると、多くて12チームかなと。14とか16だと「プレミア化」とは言えません。
 
ただ私は、日程対応でJ1を16クラブにすれば、プレミア化は当面はしなくていいのではないかなと考えます。将来はわかりませんが。ただ、現在チーム予算がJ1中で10位前後のサンフレッチェにとってはプレミア化は厳しい話にはなりますよね。私が広島が街の中心部にサッカースタジアムを創りたいと主張してきたのも、市街中心部の街づくりが第一の主眼ですが、万が一Jリーグがプレミア化してもサンフレッチェが安定的にそこに残れるようにしたいという思いもありました。
 
これは広島に関わった者としても、長い間Jリーグファンだった者としても切実な感情です。下手に現状の規制のままでプレミア化を行なうと、大阪や神戸から西にプレミア入りするクラブは無くなってしまう可能性は高いと思います。
 
一方で、株式公開の解禁や地域フランチャイズ制の緩和など、抜本的な規制緩和を行なうという前提のもとでは、プレミア化もJリーグの発展のために興味深い試みだと思います。その際は、規制緩和だけではなくて、本当に日本の枠を越えてビジネスをするという意味で、Jリーグの理事にアジアを代表する経営者を入れたりとか、プレミアリーグの実行委員会は外国人の実行委員の参加を想定して英語で行なうとか、いろいろリーグ運営も変えていく必要もあるでしょうね。要するに、プレミア化というのは、単にクラブ数を削減するだけではなくて、相当な決意が要るものだと思います。
 
何でも世の中はバランスなので、J2の真ん中か下位くらいの規模のチームがリーグ戦で6位にひっかった後に昇格することが多発しても良くないし、J2中位のクラブが滅多にJ1に上がれないのも良くない。なので、結論的にはJ1は16チームで自動昇降格を2つ、プラスJ2の3位とJ1の14位の入れ替え戦があるというのが、現状ではちょうど良いかなと言うのが私案です。2チーム減らすだけで4マッチデーが浮きます。そうすると、かなり日程が組みやすくなります。
 
14チームだとJ1の試合数が少なすぎるというのが一部のクラブから出ると思いますし。あと、Jリーグが競争原理を増やしながらも、地域クラブの経営のセーフネットをどう提供すべきかとか、クラブのITインフラ作りの基盤をどこまで支援すべきかとか、いろいろ話は尽きませんが、まずはエディオンの仕事に専念しながら、サッカーへもこれまで同様の関心を持ち続けたいと思っています。No Football, No life ですから。

――多岐にわたり、非常に興味深いお話をありがとうございました。