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アスリートとアスリートを応援する人のための知識データベース

 アスリートナレッジをご覧の皆さん、初めまして。FKタウラス・タウラゲ(リトアニア2部)所属の丸山龍也と申します。紆余屈折しながら前のめりに生きてきた結果、今はヨーロッパでCL出場を目標に精進している23歳です。
 
 自分はエリートではありません。雑草中の雑草タイプで、輝かしい経歴や成績とは無縁でした。でもそんな自分だからこそ得られた様々な経験を、アスリートナレッジの読者の皆さまにお伝えできたら…と思い、今回から筆を取らせて頂くこととなりました。
 
 僕は中学校2年の頃から海外でプレーすることを現実的に考え、中高大では同年代とプレーするよりも「海外でプロになるためにチャレンジしている20代前後の選手」と多くの時間を共に過ごしてきました。ですので、同世代の選手と比べても”海外でプロになる選手”という括りだけでいえば様々なケースを見てきましたし、自分も失敗したり成功したりしながら経験を積んできたのですが、海外でプロになるためには十人十色、本当に様々なストーリーがそれぞれにあるなと強く感じます。
 
 プロという世界は厳しくもあり、不思議な世界です。学生時代に公式戦出場機会のなかった選手が、海外でプロになったようなケースもたくさん観てきましたし、過去に年代別の代表チームに選出されるような選手でもプロの厚い壁に跳ね返されたのも目の当たりにしました。
 誰が見ても文句ひとつ言えないほど努力してきた選手でもダメな時はダメだし、そのかたわらでお調子者の楽観的な選手がスイスイと上に上がっていくのを見たりもしました。いわゆるエリートと呼ばれるような選手もいれば、カバンひとつで異国に飛び込み契約に辿り着いた選手もいますし、僕のように波瀾万丈な人生を歩んできてプロとなった選手もいます。
 
 本当に様々な例を見てきたので、それだけに「こうすればプロになれる!」「これでは絶対にダメだ」というのを言うことが出来ません。ヒトコトでは言い表せられない複雑な糸が絡み合い、その中でキッカケや運を掴んでいった選手がプロとして活躍の場を見つけていきます。
 
 ただ、そんな中でもこれから海外でプロを目指す選手や、その周りの人になにかプラスになることを伝えることが出来るとすれば「情報は大事だ」ということではないでしょうか。
 
 ■情報を受信することの大切さ
 サッカー界の現場には、トップクラブから三流リーグまで、共通して様々な情報が飛び交っています。
 
 例えば「○○FCが、外国人枠に空きがあるので助っ人FWの選手を探している」「昨年はドイツでプレーした●●選手が、月30万円ほどでプレーできる場所を探している」などなどです。
 
 クラブと選手という関係は、クラブが欲しい選手とそこでプレーしたい選手の思惑がマッチングし、はじめて契約を結ぶこととなります。
 
 どんなに良いGKも、クラブがGKを求めていなければ契約できませんし、逆に言えばレベル的に少し落ちる選手でも、そのクラブにGKの数が足りていなければ契約できる可能性は見えてきます。しかも日本人選手が海外でプレーするためには外国人枠やビザなど、現地選手以上に条件は厳しくなっていきますから、海外でプレーしたい選手にとっては言わば生命線とも言えるのがこの情報です。(参考画像参照)

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 こういった情報を手に入れるには、知人やコーチなどに相談したり、ネットや雑誌で調べ物をしたり、日頃からアンテナを張っておくことがとても大事です。また、自分だけでは限界がありますから、代理人やエージェント会社と契約してテストや選手募集の情報を手に入れることが、プロ契約には大事になってくるかと思います。
 こういった情報を持たずに単身渡航し「知人もいないがカバンひとつで海外クラブに飛び込み契約になった」といった、殴りこみというか、道場破りというか、そんな破天荒なスタイルのケースも稀にあるのですが、彼らに憧れ?後追いする人たちがなかなか契約に結びつかないのは、この情報が不足しているためです。
 僕もタイにいた時に、もう何のアテも情報もなくなってしまったので仕方なく「練習参加させてくれ」といきなり飛び込んだことがありました。練習参加はさせてもらえましたが、なかなかうまく行きませんでした。やはり事前に情報を手に入れることは、大事になってくると思います。
  
 僕はアマチュア時代からこういう情報を手に入れることに長けていました。ネットを駆使して調べ物をすることが得意であったことや、周りの先輩方に可愛がって頂いたおかげもあり、自分がまだ未熟なうちからテストや選手募集の情報だけは多く知っていました。
 30個情報があっても、そのうち1つが使い物になるかならないか? という実力だったためなかなかプロになれませんでしたが、選手として成長していくうちに徐々に自分に選択肢が持てるようになります。
 22歳でスリランカのクラブと契約を結び、はじめてプロサッカー選手になりましたが、その頃にはスリランカ以外でもいくつかテストや契約の情報を持てていたのも事実です。また、逆に言えば情報がなければトライする選択肢自体がありませんから、未だにプロになれていなかったと思います。
 
 
■自分の情報を発信することはもっと大事
 とはいえネットも発達し、代理人やエージェント会社も数年前に比べれば何倍にも増えた今の時代、海外志向の選手は比較的簡単にこういった情報にアクセスすることが可能となりました。SNSの進歩で現役選手とコミュニケーションを取ることも比較的簡単になったため、僕のもとにも高校生や大学生年代の選手から数多くメッセージが届き、プロへトライするための相談を受けるようにもなりました。
 
 しかしその多くがこういった内容です。
 
「はじめまして! 僕も丸山さんのように海外でプロになりたいです。サッカーが好きな気持ちは世界で一番持っていると胸を張って言えます! ポジションはFWです。どこかプロになれるところを教えて下さい!」といったものになります。
 
 僕も縁がほとんど無いような先輩たちにお世話になり、多くのアドバイスを受けてきましたから、なるべくこういった問い合わせには、自分ができるかぎり力になりたいと思っています。ただ、これでは助けたくても助けられないのが現状で、「まず、あなたは誰? どこでプレーしているの? 何歳? どんな選手なの? 選抜歴とかはあるの? 何を目的にサッカーしているの? どんな国に行きたいの?」と質問攻めにしてしまうことも多々。
 
 ただ、相手が僕や日本人であればこうやって返信が返ってくるからラッキーかもしれません。
「はじめまして! アフリカでプレーしているものです。やる気はあります! あなたのクラブと契約をしてくれませんか?」
 もし自分がJリーグクラブの強化部で働いているとして、ある日名前も知らないアフリカの国からこんなメールが届いたとして、あなたはどういった反応をするでしょうか?
 多くが無視をするか、もしくは優しい人であれば丁寧に返信メールを送るかもしれません。ただ、間違っても「オーケー。やる気があるなら契約しましょう!」とはならないはず……それは誰しもにわかって頂けるでしょう。
 ただ、こんなバカみたいな話と笑い飛ばしたくなってしまいますが、実は多くの日本人選手がほとんどこれを同じような状態で海外に飛び込み、そしてまともにサッカーすることも出来ぬまま、資金が尽きて帰国し夢朽ちているのです。もしくは誰にも相手にしてもらえないので海外に渡航できず、チャレンジ自体が出来ない状況となっています。
 
 これを解決するために必要なのが、CVとPVです。
 CVは経歴書のこと。自分のステータスや過去の所属歴、成績などを英語や現地の言葉でまとめていきます。内容としては雑誌の選手名鑑に載っているようなことを書き連ねていくといいでしょう。
 PVはプレービデオです。日頃の公式戦などをこまめに撮影し、編集し、Youtubeなどにあるスーパープレー集の自分版のような映像を作っておきましょう。
  
 これらをアドバイスすると「自分は大した経歴がないので……」「いいスタジアムで試合をしてないので見栄えが……」と言ったことを言う人も多いのですが、CVやPVは自分を着飾るものではなくて、自分の存在をクラブにしっかりと証明するものです。どこの誰だかわからない選手に比べれば全然いいですし、CVやPVで興味も持ってもらえれば「じゃあ一度テストに来てください」となることも考えられます。
 逆に言えば、この段階でノーと言われれば、現地で行っても契約の可能性は低いでしょう。無駄な交通費や滞在費、時間を省くリスクマネジメントにもなると思います。自分の場合はCVとPVで、日本に居ながらにしてスリランカのクラブと契約を結ぶことが出来ました。
  
 これらを作っておくことで自分を売り込むことが可能ですし、ある日いきなりコネのある人と知り合っても、迅速に動くことができます。
 

■情報の送受信を行うことがプロへの確率を上げる!
 とは言っても、冒頭にも書きましたが十人十色のケースが存在するのがプロの世界です。CVやPVを作ってもダメな時はダメですし、一度CVを見て断られたのにも関わらず、飛び込みで練習参加して契約に……ということも稀にあります。
 ただ、どんなケースにおいても情報を手に入れること、そして発信することは、必ず何かしらの部分でプラスになると思います。海外でプロになることを夢見ている選手は、日頃の練習に加えてこの「情報の送受信」に意識を配ってみてはいかがでしょうか。