athlete knowledge

アスリートとアスリートを応援する人のための知識データベース

ACL、選手を助けた冷凍納豆

Master

グランパスの食卓に絶対に欠かせないものといえば、納豆です。
納豆は、優れた植物性たんぱく質。栄養価が高いので、チームの朝昼晩の食事にも、試合前の軽食にも欠せません。年末に行われるFIFAクラブワールドカップへの出場権をかけてアジアのクラブチームがアジア各地で戦うAFCチャンピオンズリーグ(ACL)。J1の4チームが挑んでいますが、例年、Jリーグの試合の合間を縫ってのハードスケジュール。選手たちの疲労はピークのうえ、ACLのアウェイ戦は、遠征地によっては環境が不安なところもあります。
ピッチの状態など、試合会場の問題もありますが、選手の置かれる環境、宿泊場所や食事の面での不安が伴う遠征地もあるのです。日本と事情が変わらない特別心配することもない国もありますが、遠方の中東などになると日本食がなかったり、文化の違いで、こちらの常識が通用しない場合などもあります。私にとって初めての中東体験となったのは、2009年の大会でしたが、私はチームに帯同しなかったので、出発前までにできることを早速、始めました。
まず、事前に、最低限のチームの食事ルールを宿泊するホテルにファックスで伝えます。試合前の軽食には、パスタが必要、食事には必ず温野菜を付けるなど。けれど、そのとおりに出てくるかは分からないので、「大丈夫かな? 要望どおりの料理が出るかなぁ」と、気がかりでした。そして、万一、選手たちの体調が悪くなってしまったら? そんなときには、優先的にエネルギー源をとれば乗り切れます。アウェイ先のホテルで体調が悪くなってしまっても、エネルギー源の炭水化物だけは必ずとってもらいたい。日本人にとっての大事なエネルギー源は、何といってもお米。しかし、中東のお米の味は大丈夫でしょうか。そこで、グランパスでは中東でも使える炊飯器を購入してお米と一緒に持って行ったのです。現地ではチームのスタッフがシェフにお米の炊き方を指導しました。さらにご飯が進む食材があるといいのでは? 何かおいしくご飯を食べるためのものはないだろうか?―― 思案の結果、納豆を冷凍して持っていくことがスタッフから提案されたのです。
納豆があればご飯が進むはず。納豆はそれだけで食べても栄養価が高い食品ですし、慣れない土地の食事でも、チームの食事で欠かしたことのないいつもの納豆があれば、精神面でも選手を支えてくれるはず。早速、寮の食材を仕入れている業者さんに納豆を注文し、冷凍したものをチームの荷物と一緒に現地に送ることになりました。ご飯と納豆でどうか選手の食が進むように願いながらも、それ以外にもできることはしようと、注意事項を書いたプリントを作り選手に配布しました。たとえばエネルギー源の確保だけは必ずしてほしいですから、海外のホテルでも、パンとバナナは出るので、体調が悪く食欲がないときにはエネルギー源のパンやバナナを部屋に持ち帰っておくことなどの諸注意に、日本から持っていける便利な食品……スープの素、おせんべいやあられ、一切れずつ個包装されたカステラなどの紹介。その他、生水を飲まないことや、寒暖差に気をつけて寒いときは長袖を着るようになど。また、機内の乾燥に気をつけてマスクをするといった諸注意も、持っている情報はすべて資料にして渡しました。食べ物のことではなくても、選手のコンディショニングについてアドバイスすることは、私の仕事のうちです。私はできるだけのことをして選手を送り出しました。あとは選手たちの活躍を祈るばかりです。無事戦いを終え、トレーナーから、「いつもと変わらない食事で安心したよ。納豆があって選手も喜んでいたよ」と連絡がありました。体調不良を訴える選手も出なかったとのこと。残念ながら勝ち進むことはできなかったのですが……。何がなくとも納豆があれば。ますます納豆はグランパスに欠かせないものになったのです。